当方、こう見えても一応仕事はちゃんとしている。つもりだ。
しょっちゅうブログ更新するとかヒマなの?仕事してないの?Windows2000なの?2,000万も給料貰ってないから、Windows95なの? 等と心ない暴言を浴びせられる事もあるが、ちゃんと仕事している。
その中で心がけているのが、インド人のモチベーションをどうやって上げるか?と言う事。
昨日、まさにその一環の活動をして来たので、その話をしてみようと思う。
新規ビジネスのお祝いってのが目的
事の発端は、去年新しいお客さんからのビジネスを取った事。
大儀であった、褒美は何が欲しい?望むものを言うてみよ
と上から目線で部下に問うてみた所、
モノはいらないから、お祝いのディナーパーティーがしたいです
との返答。
曰く、
僕らは日本人がそうやって気を使ってパーティーとかを開いてくれる事が嬉しいんです
とのやたら殊勝な物言い。お前それマジなのか。
正直めんどくせーな、と思いつつも、そこまで言われちゃ黙ってらんねぇ って事で、ディナーに行って来たのだ。
総勢12名、但し日本人1名
周りの日本人の同僚にも声をかけてみたが、全然ノって来ない。おい。
最終的にはこんな絵面なのだ。
1対11の合コン。
酒池肉林とはまさにこの事である。
会話の内容を振り返ってみる
当然これだけの物理的な人数差が生じると、当方への集中砲火が続く事は想像に難くない。
よって、ある程度想定問答集的な事を考えて行く必要がある。
目的は、インド人に対して、
タマさんってインドの事好きでいてくれてるんだな
と思わせる事。
その為だったら俺は何でもするぜ と言う事で、色々と事前にネタを仕込んでいた。
先日のエントリのPadmavatiだって、当然ここに伏線があるのだ。
いつも通り、ケーススタディの形でみんなで勉強してみよう。
ケース1;インドをどう思っていますか?
今回、初めて飲むヤツ(部下じゃないヤツ。M君とする)がいた。
そいつらがこんな質問をして来る事くらい、後から考えればファイヤーをウォッチするよりオブビアスであるにも関わらず、すっかり忘れていた。
従って、この質問は不意打ちにも程がある。
M;タマさん、インドはどうですか?
僕;インドの事をどう思っているかって?もちろん気に入っているよ!
M;どんな所がですか?
僕;こんなに伸びる市場はないからさ!今日寝て明日起きたら成長してるんだ、こんなにアメイジングな事はないよ!日本は成長が止まっているからね!
M;なるほど!
どう見ても無理矢理感が拭えない。
インド全般の事を聞かれているにも関わらず、ビジネス面にしか注目していない。
そして、今日寝て明日起きたら成長、とかオスグッドかよお前、って感じなのだ。
明らかに失敗である。
ケース2;ご飯はどうですか?
恐らく、ケース1で満足が行かなかったんだろう。
Mのトイメンに座っていたPが別の質問を投げて来た。
P;タマさんは、インドのご飯は好きですか?
僕;そうだね、ちょっとスパイシーだよね!僕の娘はインディアンフードが大好きなんだ!
P;そうなんですか!いつもどんなレストランに行ってるんですか?
僕;(行かねーよバカ…) 前回はトライデントに行ったかな!でもあんまりレストランには行かないんだ!
P;家で作るんですか?
僕;僕にはそんなスキルはないよ!飛行機に乗る時、僕は機内食を断るんだけど、娘は毎回食べてるんだよ!美味しいんだってさ!
P;良かったです!
忍法、身代わりの術である。
タマさんはインドのご飯が好きなのか?の問いに対し、答えを言わず、娘は大好きだ、と論点をすり替える事に大成功。
ハッキリ言って当方はインドメシは好きじゃないのだが、直接それを言うと彼らが傷ついてしまうだろう、と言う気遣いの権化の為せる業だ。
なお、娘がインドメシを好きなのかどうかについては良くわからないが、機内食を普通にパクパク食べてるのは事実である。
ケース3;インドはどこに旅行に行きましたか?
来た。これこそ待っていた質問である。
M;タマさん、インドではどこか旅行に行きましたか?
僕;いや、まだ行けてないんだ!色々考えてるんだけどね!
M;次の予定はどこですか?
僕;ゴアだね!ゴアはインドの軽井沢って呼ばれてるんだ。軽井沢って知ってる?ベリービューティホープレイスでね、アイラブゼアだから楽しみなんだ!
M;そうなんですか!他にはプランありますか?
僕;ジャイプルに行きたいかな!ピンクシティーってヤツね!
M;ピンクシティーなんて良く知ってますね!エンジョイしてください!
完璧なやり取りとしか言い様がない。
ジャイプルがピンクシティーと呼ばれているのは、前回のエントリでパドミニについて調べていた際に知ったばかりであり、仕入れてわずか1週間の知識を臆面も無くひけらかす、かなりの高いスキルである。
なお、『インドの軽井沢』とか言ってしまったが、この名誉ある表現は、ゴアではなく、トヨタの鎮座するバンガロールだったり、我がタミルナドゥ州にある『ウーティ』に対して使われる表現らしく、実はゴアは全然軽井沢じゃないっぽい。
が、そんな事がインド人にバレるはずもないので、良しとしよう。
ケース4;こちらから仕掛ける
ジャイプルの話が出た所で、今度はこちらから仕掛ける番だ、とばかりに一気に攻勢に出る。
僕;ジャイプルで思い出したけど、ラジャスタン州の映画、パドミニのお話の映画、なんだっけ?
M;Padmavatiですか?
僕;そうそれ!あれ、映画延期になっちゃったね!楽しみにしてたのに!
M;良く知ってますね!どうやって知ったんですか?
僕;確かインターネットかな。いつ公開になるか知ってる?
M;未定ですが、決まったらすぐ報告します!一緒に行きましょう!
僕;お、おう。それはどうかな。DVDの発売を待つよ。
しまった。クロスカウンターを食らった。まさか『一緒に映画に行こう』なんて事を、40過ぎたオッサンインド人に言われるとは。
恋愛にサプライズは有効、とは旧石器時代から言われている事だが、もう少しで恋に落ちてしまう所だった。非常に危ないのだ。
ケース5;インドの映画は見た事はありますか?
ケース4の仕掛けにおいて、まさかの映画デートに誘われるハプニングが起きたが、本来であればこちらの会話に最初から移行する事を想定していた。
M;タマさん、インド映画好きなんですね!他にはどんな映画見ましたか?
僕;ラジニカーントは日本でもとっても有名だから、一昨年やってた『カバリ』は見たかったんだけど見られなかったんだ。
M;とっても良い映画でしたよ!僕は20回見ました!
僕;あとはスラムドッグミリオネアと、ライオンだな。どっちもハリウッドだけど、インドが題材なんだ。知ってる?
M;ライオンは知らないですね。
僕;これは見るべきだ。僕は感動して泣いてしまったよ。
M;いつも映画は映画館で見てるんですか?
僕;いや、映画館には行かないかな。あまり好きじゃないんだ。映画を見るのは飛行機の中だけだよ。
M;グレイトですね!
ラジニカーントとは、日本でも有名な『踊るマハラジャ』のオジサンである。顔だけは知ってる人が多いのではないだろうか。
映画について聞かれたら、とりあえずこのラジニカーントと、SRKと呼ばれるシャー・ルク・カーンの名前を言っておけば何とかなるだろう。
SRKはこんな人。
イケメンなのだ。
最後に映画館について聞かれるラッキーパンチがあったので、『映画館は嫌い』と言う微妙なウソを放り込んでおき、さっきの映画館デートを回避する事が出来た。良かった。
なお、インド映画については見る気もあまりないし見た事もないので、
どんな映画見ましたか?
の質問に対しては全く答えていないのだが、会話が丸く収まっているのがポイント。
と言った塩梅で、ややコミュニケーションとして成り立っていない点が散見されるものの、2時間あまりの飲み会の最中は色々な話をし、さも自分がインドについて色々と知っているかの様に見せかけたつもりになっていた。
実際どう思ってんのかは良くわかんないトコだったが、飲み会の後にこんなメッセージが。
要するに、
今日のお前は非常に良い態度だったぞ、合格だ
と言うフィードバックだ。
ヤッター!
盛った表現であったとしても、ここまで言われれば悪い気はしない。
またこの手のイベントを企画してやろう、と思う次第なのだ。
ちなみに、日本での当方の常識として、
オフィシャルの飲み会の翌日は、朝出社したら『昨日はありがとうございました』と言って上司に挨拶する
と言うものがある。
何をくだらん事を・・・昭和かよ。 と思う向きもあるだろうが、別にやって誰も損はしないんだから、やってしまえば良いのだ。
挨拶と同じで、すれば良いだけ。
それをする事で寿命が縮むワケでも資産が減るワケでもないし、潤滑油としての機能だと思えば屁でもないんだけど、意外とこう言うのを嫌うヤツがいる。ま、考え方の違いだろう。
当方は当然ながらこのルールをインドにも持ち込み、以前も部下に対し
俺がおごったら翌日の朝必ず礼を言いに来い
と強制した。
んだけど、今日、1人しか来なかった。残りの10人てめーこの野郎。
帰りのタクシー代まで自腹で出してやったのに!!!!!(1,000ルピーだけど)
ボスから施しを受けるのなんて当たり前、くらいのこの感覚が許せんのだ。
その腐った根性叩き直してやる、とイキったのは言うまでもない。
〜今日の教訓〜
お前が言わないんなら俺が言う。
明日、インド人に『一昨日はありがとね♡』ってメール打ったろ。