こんな事、今更書くまでもないのだが、当方が現在住まわせてもらっているアメリカという国はスーパー先進国である。発展途上国ではない。
インドはゴリゴリの発展途上国であり、生活に必要なコスト=リビングコストだけではなく、生き抜く為にはドラクエでいう所のヒットポイントが必要だった。なお、グルガオンはインドではないので除外する。
インドでは日々ヒットポイントを削られながら生活しており、それはつまりドラクエ的には
日々、『モンスターが現れた!状態』が続いていた
とも表現出来るだろう。
一方で、アメリカはさすが先進国であり、ドラクエ的にはモンスターの出ない街をひたすら歩いている様なモンなので、ガンショットのリスクを除けばヒットポイントを削られる様な出来事はそんなに起きない。かと言って当然ゼロではないのだが、インド対比で考えれば実に少ない。皆無と表現しても言い過ぎではないだろう。
それが主な理由となって、当方のこのブログも低刺激で実に生ぬるい内容のみがアップされる事となり、もっと言えば更新頻度もインド時代のそれと比較するとシットとしか言い様のない低さに成り下がっている。
シットとしか言い様がない、で思い出したが、会社内で起きる様々なネガティブな会話において、例えば下の立場の人から発信される
予算計上していたにも関わらずこの様な結果となり、誠に申し訳ございません。
とか、逆に上の立場の人間が発する
それは非常に残念な報告です。再発防止策と共に再度報告お願いします。
等と言ったしょうもないセンテンスを全て
シットとしか言い様がない
に置き換えれば、社内の雰囲気が非常に明るくなるのではないか、と若い頃は真剣に思っていた事がある。
部下;予算計上していたこのビジネスを失ってしまいました。シットとしか言い様がありません。
上司;そうか、それはシットとしか言い様がないな。次行こう。
たまにはこの様な会話を楽しめるくらいの心と人生の余裕が欲しい。
なお、新人の頃に、物は試しって事でそれなりにシリアスな空気の中でその発言をしてみた所、数秒の沈黙の後に普通に怒られた。シットとしか言い様がない。
話が脱線したが、ヒットポイントを削られる事象が米国においてもゼロではないよ、というおはなし。
部下の数は減って少数精鋭かと思いきや
最早正確な数字は覚えていないが、インド時代は偉そうに恐らく10人以上をマネジメントしていた殿下。人件費がクソ高い先進国アメリカに来ると、その人数は激減して5人になってしまった。
5人の内訳は男性4名女性1名なのだが、その女性は元陸軍所属の俗に言う「ベテラン」で、イラクと韓国とアフガンに駐留経験のある元ソルジャーである。恐い。
先日、相談がある、というマネジメント層が全米震撼するパワーワードを引っ提げ力強く当方のオフィスに乗り込んで来た軍人さん。
内心ビビりながらも蓋を開けてみたら内容自体はイージーで、私の問い掛けにあいつが全然反応しない!プンプン!程度だったのだが、その話をしてる際、
コミュニケーションがこんなに悪いのはあり得ない!戦場だったら人が死んでる!
と実に物騒な例えをご披露されていた。
彼女自体は非常に人柄が優れていて、我が部下にしては珍しく人の為になる事を率先してやってくれる所があり優れたベテランと言えるだろう。採用して良かった。
我が社には、彼女以外にも何人かベテランが勤務しており、何も不自然な点なく働いている。
アメリカにおいてはベテランへの優遇は破格であり、医療費や大学の学費の免除だったり、様々なディスカウント制度が充実していて、社会全体でベテランへのリスペクトをする感じになっている。
徴兵もないし兵役もない我が国においても、自衛隊経験者をその後の転職活動だけじゃなくて生活面においても優遇するとかのシステムがもっとあれば良いのにと感じた。(一応、就職支援をする援護協会なるものが存在するらしい)
書きたかったのはこれではなく、他の部下の話。仮にA君としよう。
彼は仕事よりもバーベキューとフットボールが好き、という点では他の米人と大差ない、どこにでもいるスタンダード米人だと思われる。そんなA君と飛行機に乗って客のイベントに出席しに行った時のおはなし。
差別される日本人に憤怒するA君
以前のエントリでも書いた通り、我が家の長女が昔通っていた中学校で差別的な行為をされた事がちょいちょいあったので、客のイベント会場に向かいながらその話をA君にした。すると、何故か憤怒し始め、
- そんな事は起きてはいけない(確かMUST NOTと言っていた気がする)
- 俺は自分の子供に、常に正しい行動を取れと言い続けている
- I’m sorryとしか言えないが、そんなヤツばかりではない事は理解して欲しい
みたいな事をひたすら語り出した。
当方としては、
いやー、そりゃToo badだけど楽しく行こうぜ!
的な陽気な返事が来て次の話題に移ると思っていただけに、これはやや意外だった。結局10分くらいこの話に費やしてしまい、客の所に着いてしまった。
ここまで良い話しか書いていない。どこでヒットポイントを削られたかと言うと、当然この後。
打合せをするはずだったのに
客のイベントが終わり、夜は客との会食。 会食では当然ビジネスの話もするので、重要な数字の再確認の為、一旦ホテルに戻ってロビーでクイックミーティングをする事に。
当方がラップトップを出し、殿下名物の渾身のジャパングリッシュを駆使して話を始めた所、A君はソファにふん反り返っている。はぁ?
なんでお前ラップトップ出さないの?と聞くと、力強く
俺は今回はラップトップを持って来ていない。
との回答。はぁはぁはぁ?(喘いでいるワケではない)
お前何しに来たの?あのねさっき君は僕の娘の差別経験にキレてくれたしそこは君の良い所だと思うけど出張にPC持って来ないその姿勢は許しがたいものがあるよラップトップも持ってないくせに君はスーツケースをゴロゴロ引きずってたけど何を入れてたんだい?今の時点では入ってなくてこれからお土産を大量に入れて帰るつもりなのかい?え?おい何とか言ってみろよバーベキュー野郎そんなんだから奥さんに愛想尽かされて離婚すんだろがこのすっとこどっこい!
と言って圧倒するつもりが、脳内で英語に変換する過程でだいぶ形態を変えたらしく、
OK, but you should send me biz trip report after return.
という実に的確で厳しい指導をしてしまった。
その後、そのレポートが出て来るまでに1週間を要した上に、当方がネチネチとフォローするまでアクションすら取っていなかった事は言うまでもない。
僕;ところで先週のレポートどうなった?
A;オウケイ、ワンミニッツ。
僕;ワンミニッツって60セカンズだよね、60セカンズ待てば完成する?
A;・・・今日やるよ。
インドかよ。
なお、この部下はめでたく先日再婚。自分の子3人と、先方の連れ子3人を合わせ、まさかの6人の子供のパパとなってしまった。ビッグダディ!!
という事で、アメリカにもアンビリーバボーなガイはいるんだよ、っておはなしだった。
我がヒットポイントを削りに来るモンスターは、この件においてはドラクエの様にフィールド上に出て来たのではなく、まさかのパーティ内(社内)にいたのである。
敵は身内にいたか・・・
そんなポンコツと仕事するのも、年内はあと4日。
今年の振り返りはまた別途書いてみたいと思う。
〜今日の教訓〜
敵は己の中にあり。byプラトンパイセン
自分がしっかりしていればヒットポイントは削られない。きっと。
